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魅惑な小悪魔1

「まだ、帰ってきていないのか…」

 佐々木 陽介は居間の電気をつけると呟いた。ソファの隣に重たい鞄を置くと、勢いよくソファに体を預けた。

(今日も疲れたな)

 背広の胸ポケットから、スライド式の携帯を取り出すと時間を確認する。

 22時20分―。

 ソファの前にあるガラスのテーブルに携帯を置くと、リモコンでテレビをつける。今日のニュースをやっている。とくにニュースを見たいわけではないが、部屋が静かなのも嫌な陽介。とりあえず、音がするものを流しておきたかった。

(持ち帰った仕事は風呂の後、やるかな…浴槽を洗うのも面倒だし、シャワーでいいっか)

 陽介は天井を見ながら、今後の行動を考えてみる。出来ることならこのまま、眠ってしまいたい。

「仕事するか…」

 結局、仕事をすることを選んだ陽介。重たい鞄を開けると、分厚い紙の束を出した。

「こんなに書きやがって…量が多ければいいってもんじゃねえのに」

 面倒くさそうに言うと紙の束を一つ取り、残りをテーブルの上に置いた。

 陽介は、弁護士事務所で働きながら、大学で講義をしている。現役弁護士として、学生に講義をして欲しいと大学側から要請があったのだ。面白半分で引き受けた仕事だったが、今は若干後悔をしている。

 とにかく忙しいのだ。ただでさえ、弁護士の仕事だけでもプライベートを削っているというのに、講義の資料集めや学生のレポートの評価などの持ち帰る仕事も増え、己にかける時間が全くなくなってしまった。

 クラスを持っているわけではないのに、意外と生徒に人気のある陽介。一年だけの契約だったのだが、大学側から継続の願い出があり、2年、3年と続けてしまっている。

 現在、3年目。手を抜いた授業をしていれば、1年で終わっていたかもしれない。見た目とは違い、やると決めたら真面目に取り組む性格と、適当そうに見えて学生一人ひとりに親身になって対応することから、学生からの信頼を集めて、続けていられるのかもしれない。

「こりゃ、文献の丸写しだ…手抜きしすぎ。俺の出した課題の答えになってない」

 赤ボールペンを握ると、読み終えたレポートにコメントを書いていく。

「厳しいね」

 陽介の頭の上で声がし、上を向くと、そこには藤堂 麻衣が立っていた。

「ただいま」

 麻衣は、陽介と目が合うと笑顔で言う。水色のパンツスーツを着ている。胸元にはキャミのレースが見えた。

「随分、遅いな」

「まあ、ね」

「飲んできたのか?」

「うん。誘われたから…」

「誰に?」

「知らない人。連絡先も聞かなかったな…」

 陽介が怖い顔をして何かを言おうとすると、麻衣は自分の部屋に入ってしまう。

「…ったく。何、考えてるんだ」

 ため息をつくと、陽介は次のレポートに手を伸ばした。

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