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魅惑な小悪魔11

 どうして、俺はこんなところでコーヒーを飲んでいるのだ。

 陽介は不思議に思いながら、目の前に座っている女に目をやった。

 少し緩めのウェーブして髪が、肩にかかっている。パーマをかけているのか、ムースで形が崩れないようにしてあるのがわかる。

 胸元が大きく開いている紺のワンピース。テーブルに両腕を乗せ、その上に胸を置くように座っている彼女。嫌でも胸の谷間が見えてしまう格好だった。

『先生もお買い物ですか?』

 本屋に行こうと歩いていると、椎名 寛子に声をかけられた。大学で陽介の講義をとっている生徒だ。毎回のように、講義のあとに質問をしてくる。ミニスカートだったり、お腹の出ている洋服だったりで、勉強するのにあまり似つかわしくない服ばかりを着てくる子だと、覚えていた。

 椎名も買い物の途中だとかで、彼女の質問に答えているうちに、彼女の買い物に付き合わされ、お茶まですることになってしまった。

 2年前だったら、こんな子に誘われたら喜んで付き合っていたかもしれないが、今はそんな気になれない。早く、買うものを買って家に帰りたかった。

「先生?」

 思わず、立ち上がった陽介に椎名は不思議そうに見上げた。

「トイレに行ってくる」

 椎名が頷くと、早足でトイレに向かった。別に用を足したいというわけではなかった。ただ、彼女と一緒にいるのが苦痛に感じた。しかし生徒の手前、さっさと『帰ろう』とも言えず、彼女のペースに巻き込まれてしまった。

 トイレの鏡の前に立つと、ため息をついた。面倒な子に捕まってしまった。

「あら、勝手に先生の携帯を見てもいいのかしら?」

 陽介の携帯をいじっていた椎名。突然、前に立った女に声をかけられ、睨み上げた。

「あんた、誰?」

 先ほどまでとは全然違う口調に前に立っていた麻衣はクスリと笑った。

「人の携帯を見るなんて失礼よ」

 椎名が持っている携帯を取り上げると、麻衣は元の位置に戻す。生徒がこんなことをしていると知ったら、陽介は少なからず衝撃をうける。そして彼女にたいして、軽蔑をするだろう。

「彼が好きなら、彼が嫌がることをしない方がいいんじゃない?」

「だから、あんたは…」

 『誰よ』そう言おうとするが、陽介が後ろから来るのが見え、喉を鳴らして、不機嫌そうに横を向いた。

「あれ? 麻衣? どうした」

 麻衣は振り返ると、何事も無かったように笑顔で彼を見つめた。

「陽介がいるのが外から見えたから、声をかけようと思って」

 麻衣の姿を見た陽介は安心する。これで椎名と別れられる。そう思ったのだ。

「そうか。今、帰り?」

「まあね。寄り道して洋服を買っちゃったけど」

 買い物袋を見せて、麻衣は言う。

「また、買ったの? あんなにあるのにか?」

「だって可愛かったの!」

 ため息をつく陽介。その会話を聞いている椎名は面白くなさそうな顔をして、二人を見つめていた。

「椎名、そろそろ出ようか。遅くなると、ご家族が心配するよ」

 そう言うと、陽介は伝票を持って、レジのほうへ歩いていった。

 椎名は不満そうだ。貴女さえ来なければ、そう言いたげな顔で麻衣は睨むと、陽介の後をおって歩き出した。

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